3月下旬に入り,東京の桜は満開になりました。
綺麗な桜をみていると,リラックスでき,より一層,弁護士業務に身が入ります。
さて,今回も交通事故に関するお話しをさせていただければと思います。
通常,加害者や加害者が任意に加入する保険会社から賠償金が支払われます。
もっとも,加害者が任意保険に加入しておらず加害者に資力がない場合や加害者が特定できているが行方不明の場合には,加害者や加害者の任意保険会社から賠償金を回収することが不能ないし困難になります。
そこで,今回は,このような場合でも回収する方法として,被害者請求について訴訟を行う場合についてお話しします。
自賠責保険会社に対して,被害者請求を訴外(裁判外)で行うと,以前のブログでもお話ししたとおり,傷害分(後遺傷害と死亡事案以外のお怪我に関する賠償部分)では,通院慰謝料が,原則として,①総治療期間×日額4200円,②実通院日数×2×4200,の①と②計算式を比較して低い金額になります(いわゆる「自賠責基準」です。)。
これに対して,被害者請求を訴訟で行う場合には,自賠責基準の上限額の制約(死亡分であれば3000万円,傷害分であれば120万円など)はあるものの,上限額の範囲内で裁判所基準の慰謝料等を獲得できることがあります(最判平成18年3月30日 民集第60巻3号1242頁)。
訴訟と訴外で支払基準が異なる理由は,平たく説明すると,訴外では円滑かつ迅速な保険金支払いのために,画一的に自賠責基準での支払がなされる反面,訴訟においては,事実や証拠を精査するため,裁判所が支払保険金額を定めても問題ないことだとされています。
たとえば,総治療期間120日,実通院日数40日の事案であれば,訴外では,自賠責基準になるため,傷害分につき,①総治療期間120日×4200円=50万4000円>②実通院日数40日×2×4200円=33万6000円,となりますので,通院慰謝料は②の金額になります。
一方で,訴訟した場合には,一般的には裁判所基準になるため,総治療期間120日(実通院日数40日×3)を基準として,通院慰謝料が67万円になることから,治療費・交通費・慰謝料・休業損害などの傷害分の項目の合計で,120万円以内であれば,自賠責保険会社に対して,被害者請求を訴訟で行うことで,自賠責保険会社から前記裁判所基準の慰謝料を獲得できることがあります。
このように金額差が大きくなるケースもございますので,交通事故に精通した弁護士にご相談することをお勧めします。