自賠責保険に被害者請求する場合に必要になる書類は何がありますか?

交通事故のご相談を対応していると、稀に「自賠責保険に被害者請求する場合に必要になる書類は何がありますか?」とご質問される方がいらっしゃいます。
そこで、今回は、被害者請求をする際の必要書類や提出書類についてお話したいと思います。

支払請求書兼支払指図書
自賠責保険会社から取得することができます。支払先の口座などを記入する書類になります。

印鑑登録証明書
市役所等で取得できます。

交通事故証明書
自動車安全運転センターで取得できます。インターネットからの申請や郵送による申請(警察署に置いてある申請用紙を取得し申込む方法)もあります。

事故発生状況報告書
自賠責保険会社から取得することができます。
事故状況を記入する用紙になります。

診断書・診療報酬明細書
自賠責保険会社から白紙を取得することができますので、白紙を取得したら、病院に作成を依頼するものになります。

薬局の領収書

施術証明書
接骨院(整骨院)に通院されており、その分の補償を受けたい方は提出が必要になる書類です。
自賠責保険会社から白紙を取得することができますので、白紙を取得したら、接骨院(整骨院)に作成を依頼するものになります。

通院交通費明細書
自賠責保険会社から取得できます。
発生した通院のための交通費を記入する用紙になります。

休業損害証明書
事故により休業が生じ、減給されたまたは有給を使用された方が、勤務先に作成依頼する用紙になります。
併せて、事故前年度の源泉徴収票などが必要になります。
自営業の方は、事故前年度の確定申告書が必要になります。

被害者請求の書類の集め方としては、①交通事故証明書を取り付ける、②交通事故証明書に記載された相手方の自賠責保険会社に連絡して被害者請求に必要な書類一式を郵送で取得する、③各必要書類の取付、の流れで行うとスムーズであることが多いです。

被害者請求には様々な書類が必要になりますので、お悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。

第三者行為災害届について

交通事故で受傷した場合に、健康保険や労災保険を使用するときには、第三者行為災害届(名称は提出先の健康保険組合などによって異なります)を提出する必要があります。
交通事故のご相談の中で、第三者行為災害届の提出方法や記載事項について質問されることがありますので、今回は、第三者行為災害届についてお話したいと思います。

第三者行為災害届の提出が必要となる理由としては、主に、交通事故など第三者が治療費等の賠償金を負担すべき義務がある場合において、労災保険や健康保険組合が負担した治療費等の金額について、過失割合に応じて求償するために、相手方の情報や相手方の自賠責保険・任意保険などの情報の記載を求めるものです。
そのため、第三者行為災害届に記載する情報としては、ある程度正確に求償できる程度に事故の状況などを含む事故の詳細や相手方の情報、自賠責保険会社・任意保険会社などの情報を記載すれば受理されることが多いです。

また、併せて、交通事故証明書の提出を求められますが、提出先によって、原本を求められる場合と写しで足りる場合があります。

相手方が記載する誓約書(念書という題名のこともあります)については、相手方から拒否される場合もありますが、その場合には、提出先に確認したうえで、事情を記載して提出することで足りることがあります。

第三者行為災害届の提出時期については、速やかに提出することが望ましいですが、事情と提出先によっては、2か月程度待ってもらえることもあります。
提出先と連携しながら進めていくほうが安全です。
第三者行為災害届の提出前であっても、健康保険や労災保険を使用して治療を受けることはできますので、受診前に提出先に確認しておくのがおすすめです。

なお、労災保険については、通院先の医療機関によって、第三者行為災害届以外の提出書類の様式が異なることがありますので、勤務先や労働基準監督署に確認しながら進めていくほうが安心です。

交通事故で健康保険や労災保険を使用する場合に、提出書類や提出方法で悩まれる方も多いので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

MRIで撮影したら、ヘルニアと言われたのですが…

交通事故のご相談を対応していると、頸椎捻挫や腰椎捻挫などの傷病の方で、①「MRIで撮影したらヘルニアと言われ、医師からヘルニアは事故が原因かは分からないなどと言われたのですが、もう治療費は支払われないのでしょうか?」や②「MRIで撮影したらヘルニアと言われ、医師からヘルニアは事故が原因かは分からないなどと言われたのですが、後遺障害は認定されないのでしょうか?」、③「MRIで撮影したらヘルニアと言われたのですが、ヘルニアは後遺障害認定の対象ですか?」など様々なご質問をされる方がいらっしゃいます。
そこで、今回は、上記①〜③についてご説明したいと思います。

①と②について
仮にヘルニアが事故が原因か不明、または、事故と因果関係が無いとしても、事故前には頚部痛(腰部痛)が無く、証拠上認定される受傷態様に照らして受傷することが通常である場合には、基本的には、事故とヘルニアとの間の因果関係は認定されないものの、事故と症状との間の相当因果関係は認められます。
そのため、症状固定に至っていないのであれば、継続して治療費が支払われる可能性があります。 
また、同様の理由から、残存した症状に関して、後遺障害が認定される可能性があります(器質的損傷を伴わない打撲や捻挫による頚部痛や腰部痛については、受傷態様、治療状況、通院頻度、年齢など様々な点を考慮して将来においても回復が困難な障害と捉えられるかが後遺障害認定のポイントであることは以前もお伝えしたとおりです)。

③について
ヘルニアが存在している、または、事故により生じたこと単体で後遺障害の対象となることは基本的にはありません。
あくまで、頚部痛や腰部痛など残存した症状が後遺障害の対象となり得ます。
ヘルニアがあるから後遺障害認定を受けられるということではなく、ヘルニアがあることにより、無い方に比べて症状が重篤化する可能性があり、また、将来においても残存する可能性が比較的高いことから、頚部痛や腰部痛などの残存した症状の後遺障害認定において認定方向に傾く一つの事情として捉えられることがあります。

交通事故に伴いヘルニアが見つかった場合、様々な疑問を持つ方がいらっしゃいますので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

こちら側にも過失が生じると、保険料は上がってしまうのですか?

交通事故のご相談を承っていると、「こちら側にも過失が生じると、保険料は上がってしまうのですか?」という質問を受けることがあります。
これに対して、「車両保険や対物賠償保険、対人賠償保険などを使用する場合には、基本的には、保険料が上がりますが、これらの保険を使用しなければ保険料は、基本的には上がりません」とお答えしています。

1 保険の構造は?
 保険の構造は、大きく分けると4種類(厳密には特約なども含めるとそれ以上あります)です。
 ①相手方の賠償に関する補償で、かつ、お怪我に関する補償である対人賠償保険、②相手方の賠償に関する補償で、かつ、車両などを含む物的損害に関する補償である対物賠償保険、③ご自身側のお怪我に関する補償である人身傷害保険、④ご自身側の車両に関する補償である車両保険、の4種類です。
 このうち、対人賠償保険、対物賠償保険、車両保険、を使用すると、基本的には保険料が上がりますが(厳密には、無過失の場合には車両保険を使用しても保険料が上がらないことがあります)、人身傷害保険は使用しても、基本的には、保険料は上がりません。

2 任意保険を使用するかは基本的にはご自身で決めることができる
 ご自身に過失が無い場合には、対人賠償保険や対物賠償保険を使用する必要が無いことは当然ですが、ご自身に過失がある場合であっても、任意保険を使用するか否かは、基本的にはご自身で決めることができます。
 たとえば、車両を含む物的損害について、過失割合10対90、こちら側が相手方に45万円(50万円✕0.9)請求でき、相手方はこちら側に5万円(50万円✕0.1)請求できる事案(こちら側の車両保険を使用した場合も保険会社から50万円支払われると仮定)があったとして、車両保険と対物保険を使用することで保険料が10万円を超えて上がってしまうような場合には、車両保険や対物賠償保険などを使用せずに相殺合意を行う(45万円と5万円を相殺)などして、40万円を受け取る方が得になるため(車両保険の使用により得られる利益5万円+対物賠償保険の使用により得られる利益5万円=10万円である一方で、保険料が10万円を超えて上がってしまうため)、車両保険や対物賠償保険を使わないことが考えられます。

保険を使用すべきか否かについては悩ましいことも多いため、お悩みの方は弁護士に相談することも選択肢の一つです。

むちうち案件の後遺障害認定に関する特殊な事情について

むちうち案件の後遺障害等級認定は、事故の大きさや通院頻度、治療内容、通院期間、年齢、画像所見の有無、診断書の記載内容など様々な事情を総合的に考慮したうえで判断されることは、以前、ブログでもご説明させていただいたとおりです。
初回の後遺障害等級認定申請で非該当になった事案であっても、異議申立手続において特殊な事情を指摘して後遺障害が認定されることがあります。
今回は、その中でも、同乗者が後遺障害14級の認定を受けているケース、継続的にトリガーポイント注射を受けているケース、ヘルニアなどの所見があるケース、についてお話したいと思います。

まず、同乗者が後遺障害14級認定を受けているものの、本人は後遺障害が認定されなかったケースですが、本来は、受傷態様やその後の症状の経過は個々人ごとに異なるため、本人と同乗者の後遺障害等級認定申請の結果が異なることは十分にありえます。
もっとも、事故の大きさという意味では、同乗者と本人は変わらないため、同乗者が後遺障害認定を受けている場合には本人も後遺障害が認定されやすい傾向があります。
そのため、同乗者の後遺障害等級認定申請の結果を添付して、異議申立手続を行うことにより、後遺障害が認定されることがあります。

次に、継続的にトリガーポイント注射を受けているケースについてですが、通常、むちうち症の治療は薬の処方や理学療法を含むリハビリなど、身体への負担が少ない治療内容であることが多く、トリガーポイント注射は、強い疼痛を伴う治療になるため、行われることは少ないです。
継続的にトリガーポイント注射を行っているということは、それだけ症状が重いことを示す要素になるため、カルテなどを添付して異議申立手続を行うことで、後遺障害が認定されることがあります。

その他、事故の大きさはそれほど大きくないもののヘルニアなどの画像所見があり、症状の経過が自然なものであるケースですが、事故の大きさを重く見られて初回の後遺障害等級認定申請では非該当になってしまったものの、異議申立手続により後遺障害が認定されることがあります。
この類型は、ヘルニアなどの所見があることが影響して事故の大きさに比して通常よりも症状が重く出てしまうことがあり得るため、所見に照らして症状の経過が自然である場合には、後遺障害が認定されることがあります。

このように、後遺障害は奥が深い分野になりますので、後遺障害でお悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

症状が残っているにもかかわらず、保険会社から治療費の打ち切りがされてしまうことはありますか?

交通事故のご相談の際、「症状が残っているにもかかわらず、保険会社から治療費の打ち切りがされてしまうことはありますか?」というご質問があります。
ここで、相談者の方がおっしゃる「治療費の打ち切り」とは、保険会社の一括対応(自賠責保険で支払う分と任意保険で支払う分を一括で任意保険会社が支払うこと)によって、保険会社が、直接、各医療機関に治療費を支払うことを保険会社が打ち切ることを意味しています。
このようなご質問に対して、法律上は、保険会社は一括対応をいつでも打ち切ることができることをお伝えすると驚かれる方が多くいらっしゃいます。
ご自身が被害者であれば、保険会社が一括対応を行い、各医療機関に対して治療費を支払うことが多いことからすると、ご自身の経験や周囲の方の経験と整合がとれないように感じる方も多く、驚かれることも無理は無いと思います。
もっとも、法律上は、任意保険会社には、一括対応を行う義務すらありません。
そのため、保険会社に対して交渉してもなお打ち切りの意志が固い場合には、残念ですが、一括対応は打ち切られてしまいます。

一括対応を打ち切られてしまった場合に、基本的には、窓口で治療費を負担しつつ通院を継続し、最終的に相手方任意保険会社と交渉することや自賠責保険の枠(1つの自賠責保険につき傷害分で120万円が上限)が残っているようであれば、被害者請求も選択肢に入ります。
もっとも、被害者請求は、事故が軽微である場合に、事故と負傷との間の相当因果関係が否定されてしまうことがあることや、自賠責保険の枠の計算の際に、治療費だけでなく交通費、休業損害、慰謝料(総治療期間✕4300円または実治療日数✕2✕4300円のうち低い方が基本的な自賠責基準の通院慰謝料になります)などの合計で自賠責保険の枠の残りがあるかを計算しないと有効な手段となるかの判断が難しいことなどが注意点です。
任意保険会社から治療費の打ち切りの話がありましたら、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

裁判所から和解案が出される時期について

交通事故の案件を多く対応していると、示談(裁判にならないケース)で解決することが多いですが、裁判になってしまうこともあります。
その際、依頼者の方からの質問で、「いつ裁判は終わるのですか?」という質問がされることがあります。
裁判の終わり方として、主要なものは、和解と判決がありますが、今回は、裁判所から和解案が出される時期についてお話しします。

「裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる」(民事訴訟法89条1項)とされています。
交通事故のお怪我に関する損害賠償請求事件であれば、通常、主張立証が一定程度煮詰まった段階(たとえば、争点に対して一通りの主張がされ、かつ、カルテなどの重要な証拠が提出された段階)で、一度、裁判所からの和解案が出されることが多いです。
この段階で和解が成立しなければ、審理がさらに進み、当事者尋問や証人尋問が予定される場合には、尋問前に、一度、和解案が出されることもあります。
また、尋問後に和解案が出されることもあります。

双方が和解案で和解することを受諾した場合に、その和解案で和解が成立することになるため、一方でも和解を受諾しなければ、和解は成立しません。
そのため、和解案の内容を精査し、和解を受諾せずに、裁判を継続した方が有利であると考えられる場合には、依頼者の方と協議のうえで、和解を受諾しないことが多いです。
一方で、和解を受諾せずに、裁判を継続した方が不利であると考えられる場合には、依頼者の方と協議のうえで、和解を受諾することが多いです。
私の経験上も様々な和解案が出されましたが、その多くは、依頼者にとって有利なものである一方、一部、不利な和解案が出されて受諾しなかったこともあります。
和解案が出されるということは裁判官の心証が一定程度明らかにされたことになるため、不利な和解案を出された場合には、その時点での裁判官の心証を理解したうえで、良い心証になるために、改めて主張や証拠を補充することが多いです。

なお、最後まで和解が成立しない場合には、判決が出されることになります。
いずれにしても、適宜、弁護士が今後の見通しを説明したうえで、依頼者の方としっかり協議することが大切です。

仕事に復帰すると治療費が支払われなくなりますか?

交通事故のご相談を多く対応していると、「仕事に復帰すると治療費が支払われなくなりますか?」という質問を受けることがあります。
ご質問の背景としては、保険会社の担当者から仕事に復帰すると治療費が支払えなくなると言われた方や周囲の方から同様のことを言われた方、ご自身で考えて不安に思われた方など様々です。

交通事故の治療費の支払は、治療の必要性と相当性が認められる範囲で行われます(いわゆる症状固定までの治療費に限定されます)。
そのため、仕事に復帰したとしても、治療の必要性と相当性が認められるのであれば、治療費は支払われます。
たとえば、追突事故で、車両の損傷が中程度(修理費40万円程度)、事故により首と腰を負傷し、定期的に整形外科を受診している方がいらっしゃったと仮定して、この方が事故直後、首と腰の痛みが強いため仕事を2週間休まざるを得なかったが、痛みは続いているものの仕事に復帰できる状況になったため、2週間経過後に仕事に復帰した事例を考えてみます。
この場合に、主治医の見解としても治療が必要だと判断されている場合には、当然、痛みが残っており、かつ、事故からまだ2週間しか経過していないため、一般的には治療の必要性が認められます。
そのため、仕事に復帰した後も、治療の必要性と相当性が認められる範囲で治療費が支払われることになります。
このように、仕事に復帰できる状況と治療の必要性と相当性が認められる範囲は異なることが多くあります。

なお、前記の質問と併せて、「仕事を休んでいるのですが、いつまで、休業損害が支払われますか?」という質問もされることがあります。
休業損害が認められるためには、休業の事実だけでなく休業の必要性も認められる必要があります。
そのため、仕事に復帰できる状況であるにもかかわらず、休業している場合には、休業損害は認められないことになります。
休業の必要性は、その症状や仕事内容、主治医の意見、受傷の大きさなどを考慮して判断されるため、主治医に症状やどのような仕事内容に支障があるのかをしっかり伝えて、主治医の意見を得ておくことが大切です。

休業損害や治療費の支払いにお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談すると安心です。

任意保険会社から調査会社に事故状況などの調査を依頼すると言われた場合

1 調査会社が事故状況などの調査を行う理由
 調査会社が事故状況などの調査を行う理由は様々ありますが、その中でも多いのは、①事故と負傷との因果関係に疑義があるケース、②過失割合に争いのあるケース、③事故と負傷箇所との整合(因果関係)に疑義があるケース、④治療内容などに疑義があるケース、があります。
2 事故と負傷との因果関係に疑義があるケースについて
 任意保険会社が損害保険料率算出機構(調査事務所)に対して、今回の事故で負傷することが認められるかを確認する事前認定のために調査されている場合があります。
 ミラー同士の接触事故、クリープ現象による追突事故、駐車場内の逆突事故、物損が軽微である事故などが因果関係を否定されやすい傾向にあります。
 特に気をつけなければならないのは、こちら側の物損が軽微であるケースであっても相手方車両の損傷が相当程度生じている場合、相手方車両の損傷の程度が分かる資料が損害保険料率算出機構に提出されていないことがあることです。
 この場合には、相手方車両の損傷の程度が分かる資料を提出してもらうことが大切です。
3 事故と負傷箇所との整合(因果関係)に疑義があるケース
 たとえば、追突事故で、車両の損傷がそれほど大きく無いにもかかわらず、首や腰だけでなく、右足や右手首などを痛めた場合に、保険会社が、今回の事故で右足や右手首を痛めることについて疑いを持つことがあります。
 この場合には、右足や右手首の受傷機転(怪我をした原因)をしっかりと伝えることが大切です(たとえば、右足でブレーキを踏んでいたところ追突され、足に負荷がかかり負傷した場合にはそのことを伝えることや右手でハンドルを握っていて追突され右手首をひねった場合にはそのことを伝えることなどが考えられます)。
4 不安になったら弁護士に相談を
 交通事故に関して調査会社から調査の話が出るなど、今後について不安になられましたら、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故で頭部を負傷した場合の注意点

日々、交通事故のご相談を対応していると、自転車に乗っているときに衝突され頭を路面に打ち付けた方やバイクで走行中に跳ねられ頭を路面に打ち付けた方など頭部を負傷している方が一定数いらっしゃいます。 
そこで、今回は、交通事故で頭部を負傷した場合の注意点についてお話しします。

交通事故で頭部を負傷した場合には、できる限り早期に精密検査(CTやMRIなど)を受けることが大切です。
精密検査を受けて異常がなければ安心ですし、異常があるのであれば今後の治療方針に大きな影響を与えるため、いずれにしても精密検査を受けることが大切です。
医師は患者からの情報をもとに精密検査を受けるべきか否かを判断しますので、事故状況を説明して頭部を負傷していることを理解していただくことも大切です。

また、事故直後に検査を受け、異常は無かったたものの、事故後から事故前には無かった行動や言動がある場合には、継続的に脳神経外科を受診することが安全です。
びまん性軸索損傷など事故から時間が経過した後に脳損傷が画像上発見されるようなものもありますので、症状があるうちは継続的に受診し、適切なタイミングで精密検査を受けることが大切です。

頭部を負傷した場合に、高次脳機能障害になってしまう方もいらっしゃいますが、高次脳機能障害の症状として、たとえば、事故前には頭の回転がとても早かった方が平均程度になってしまった場合や事故前は優しい性格であった方がすぐ怒り出す性格になってしまった場合など、事故前の本人の状況を知らない医師では把握しにくい症状もあります。
主治医に症状を把握していただくためにも、ご家族の方が事故前と事故後の変化を適切な形で医師や看護師に伝えることが大切です。

高次脳機能障害の症状が治らなかった場合に、後遺障害等級認定申請を考える方もいらっしゃいます。
医師が作成する神経系統の障害に関する医学的意見書やご家族が作成する日常生活状況報告書の記載内容が適切なものでないと適切な後遺障害等級が認定されないことがあります。
頭部を負傷した場合には、様々な注意点がありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみることも選択肢の一つです。

池袋母子死亡事故について

 日々、交通事故に関する報道が多くありますが、その中でも、池袋母子死亡事故に関する報道がありましたので、お話ししたいと思います。

 池袋母子死亡事故(池袋で2019年4月に発生した母子2人が死亡した交通事故)の損害賠償請求について、10月27日に約1億4600万円の賠償を命じる判決が言い渡されました。
 約4年前に報道で事故を知り、なんとも言えない気持ちになったことを、昨日のことのように思い出します。
 妻と子を、突然、失ってしまうということ、最後のお別れもできず失ってしまうこと、これからの未来が突然奪われてしまったこと、とても想像ができないことですが、それが起こってしまったご遺族の方は想像を絶する辛さだったと思います。

 私も、交通事故を集中的に取り扱う弁護士として、死亡事故に携わることも多くありますが、ご遺族の方の気持ちを考えるといつも遺族の方にかけられる言葉が乏しく、自分にできることは何があるんだろうかと自問自答しながら、精一杯、弁護士として活動しています。
 死亡事故はもちろん、事故によって高次脳機能障害になられてしまい生活が一変してしまった方、手足が不自由になり生活が一変してしまった方、様々な方からご依頼をいただきますが、その度に、自分にできることは何があるんだろうかと自問自答してしまいます。
 弁護士の活動は、適切な賠償金を得ることはもちろんですが、何か被害者やご遺族の方の支えになれることは無いのかと考え、行動することも大切だと思っています。

 約4年前に、死亡事故の現場に向かい、花束を添えさせていただきました。
 その想いは、もちろん、亡くなられた方への想いもありますが、それだけでなく、ご遺族の方が、少しでも前を向いて生きてほしいという願いも込めてです。
 今回の判決で、1つの区切りを迎えたかもしれませんが、ご遺族の方にとっては忘れられない事故であることに違いはありません。
 交通事故に携わる弁護士として、ご遺族の方が、亡くなられた方の分も、精一杯、前向きに生きていくことを切に願っています。

むちうち症になった方の事故後の注意点

交通事故によりむちうち症になった方のご相談も数多くありますが、その中で、初めてご相談いただいたときには手遅れになっていることもあります。
そこで、今回は、交通事故によりむちうち症になった方の事故後の注意点についてお話しします。

1 早期の受診が大切
 事故によりお怪我された場合には、できる限り早期に病院を受診した方が、症状が軽く受け取られる可能性を低くでき、かつ、事故とお怪我との因果関係についても争われにくくなります。
 そのため、早期の受診が大切です。
2 事故から2週間(14日)以内が特に注意
 事故から2週間以上経過してから医師に伝えた症状について、自賠責保険では、事故との因果関係が認められないことがあります。
 そのため、事故から2週間(14日)以内に新たな症状が生じた場合や以前医師には伝えていなかった症状がある場合には、医師に伝えてカルテ(診療録)に記載してもらうことが大切です。
3 症状を伝えるときの注意点
 むちうちの症状の中には、一日中痛みが続けており、天候の悪い時により症状が悪化する方がいらっしゃいます。
 この場合に、受診時に伝える症状として、「雨の日に痛い」ということを強調するあまり、カルテ(診療録)に「雨の日に痛みが生じる」などと記載され、結果として、裁判所や保険会社などから雨の日のみ痛みが生じる(いわゆる天候時痛)との認定をされてしまうことがあります。
 天候時痛の認定がされてしまうと、早期の治療費の打ち切りや後遺障害等級認定申請においても不利な扱いをされてしまうことがあるため、症状の伝え方には注意が必要です。
4 定期的な通院を
 むちうちの場合には、骨折とは異なり、症状を裏付ける客観的証拠が乏しいため、定期的に通院することが大切です。
 定期的に通院していない場合には、症状が軽く受け取られる可能性があることや症状が治ったものと認定されることがあります。
5 万が一治らなかったときに備えて
 完治することが一番ですが、万が一治らなかったときに備えて、通院段階から、後遺障害等級認定申請に不利な状況にならないようにしておくことも大切です。
 適切な通院頻度の維持、症状の伝え方など様々ありますが、いずれにしても交通事故に詳しい弁護士からアドバイスを受けることが大切です。

助手席に座っていて交通事故に巻き込まれた場合の注意点について

日々、交通事故のご相談を多く対応していると、助手席に座っていた方が交通事故に巻き込まれたケースについてのご相談がポツポツあります。
そこで、今回は、助手席に座っていて交通事故に巻き込まれた場合の注意点についてお話します。

1 運転手の不注意で生じた自損事故の場合
この場合には、運転手は助手席の方に対して損害賠償を支払う義務を負います。
運転手と助手席の方がご家族の場合で、人身傷害保険(ご自身側の保険でご自身などの治療費等を支払う保険)に加入している場合、人身傷害保険を使用して治療を受けることが多いです。
一方で、運転手が人身傷害保険などを含む任意保険に加入していない場合は、治療費を立て替え払いして、後々、運転手から支払いを受けるか、または、自賠責保険会社に請求することが考えられます。
自賠責保険会社に請求する場合には、①自賠責保険の契約者が誰か、②車両の所有者は誰か、③日頃、助手席の方が運転することはあるのか、などを確認すると良いです。
①自賠責保険の契約者が助手席の方で、②車両の所有者も助手席の方であれば、自賠責保険を使用できない可能性が高い一方で、①自賠責保険の契約者が運転手で、②車両の所有者も運転手で、③日頃、助手席の方は運転をしておらず、今回も運転をする予定は無かった、となれば、自賠責保険に請求できる可能性が高いです。

2 別の車両の運転手の不注意と乗っている車両の運転手の不注意により生じた事故の場合
 この場合には、別の車両の運転手(Aとします)と乗っている車両の運転手(Bとします)の双方が、助手席の方に損害賠償を支払う義務を負います(いわゆる共同不法行為)。
 通常は、過失が大きい方の保険会社が治療費の支払い等を対応しますが、過失が大きい方が任意保険に入っていない場合などは異なる対応になります。
 共同不法行為の場合には、Aの車両の自賠責保険とBの車両の自賠責保険の両方に対して治療費等を請求できることがありますが、この場合も、Bの自賠責保険に請求できるかは前記1と同じ注意点があります。
 前記1の注意点が問題無ければ、2つの自賠責保険に治療費等を請求できる可能性が高いため、その場合には、自賠責保険の枠は合計で240万円(治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料など傷害分の合計)が上限になります。
 保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合であっても、自賠責保険に対して請求することで回収できることがあるため、注意が必要です。

事故後に生じた症状に関する注意点

交通事故のご相談を多く取り扱っていると、事故直後には生じていなかった症状が後から出てきたことに関するご相談がよくあります。
そこで、今回は、事故後に生じた症状に関する注意点についてお話しします。

事故から一定期間経過した後に生じた症状については、事故との因果関係の存否が問題になります。
自賠責保険では、事故から2週間以上経過した症状については、基本的には事故との因果関係を認めません。
たとえば、事故当初は首の痛みのみ生じていましたが、2週間経過した後に腰の痛みが生じた場合には、基本的には、腰の痛みとの因果関係は否定されます。
この2週間以内という基準は、基本的には、医療証拠との関係で把握されるため、たとえば、事故日に受診して、首の痛みのみ伝えて、その後、事故から3日後に腰の痛みが生じていたにもかかわらず、受診しないまま、事故から2週間経過した場合には、基本的には、腰の痛みとの因果関係が否定されます。
また、仮に2週間以内に受診した場合であっても、カルテなどの医療証拠に記載されていない場合には、因果関係が否定されることになります。
症状が新しく出現した場合には、できる限り早期に受診して、カルテなどに記載してもらうことが大切です。

医師に対する症状の伝え方としては、毎回症状をしっかりと伝えることが大切です。
後遺障害申請では、症状の一貫性、継続性が問題になることがありますが、その際に、カルテの記載において、症状が漏れている受診日があると、それを理由に、症状の一貫性、継続性が否定され、後遺障害として認定されないことがあります。
また、後遺障害申請までは至らないケースであっても、治療をしていく中で、症状を伝え忘れたために、治ったと認定されてしまうこともあります。
毎回症状をしっかり伝えることが大切です。

事故後に生じた症状については、できる限り早期の受診と適切な対応が必要になりますので、お悩みの方は、お早めに交通事故に詳しい弁護士に相談することをオススメします。

自賠責保険の補償範囲

交通事故案件のご相談を多く対応していますが、その中で、自賠責保険の補償範囲について問い合わせがあることが多いため、今回は自賠責保険の補償範囲についてお話します。

そもそも、自賠責保険は公道で自動車を運転する上で法律上義務付けられている、いわゆる強制保険です。
傷害分(治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料など)の上限は120万円、後遺障害分はその等級に応じて上限額が定まり、死亡分は3000万円が上限です。

自賠責保険では物的損害に関する補償はされません。
たとえば、相手方が任意保険に加入していない場合で、車両が損傷し、お怪我もされていた場合に、お怪我に関しては、自賠責保険で一定の支払いを受けることができますが、車両に関しての損害は、自賠責保険では支払われないことになります。
そのため、車両に関しては、相手方の任意保険があれば、任意保険会社に請求することになりますが、任意保険に加入していない場合には、相手方本人から支払いを受けることになります。
相手方本人が資力が無い場合には、事実上、回収が困難になることもあるため、要注意です。

自賠責保険の上限額は、あくまで上限に過ぎず、その中で細かい支払基準があります。
たとえば、傷害分に関しては、自賠責基準の慰謝料は、実治療日数✕2✕4300円、または、治療期間✕4300円、のうちいずれか低い金額になります。
過失割合当方0対相手方10、治療期間90日、実治療日数30日のむちうち症の方であれば、実治療日数30✕2✕4300円=25万8000<治療期間90日✕4300円=38万7000円であるため、自賠責基準の慰謝料は25万8000円になります。
なお、治療期間90日のむちうち症の弁護士基準の慰謝料は、53万円が目安になりますので、上記事例では自賠責保険では支払いきれない部分が20万円以上生じていることになります。
いずれにしても、交通事故の慰謝料でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

歩行者と自転車の事故の注意点

 交通事故の相談をご対応していると、歩行者と自転車の事故に関する相談があります。
 そこで、今回は、歩行者が被害者になった場合の歩行者と自転車の事故の注意点についてお話しします。

1 警察を呼ぶ
 歩行者と自転車の事故だと、自動車事故とは異なるため、警察を呼ぶという発想が乏しい方も少なくありません。
 しかし、警察を呼ばないと、事故の発生や事故の状況についての証拠が薄くなる可能性があります。
 そのため、まずは警察を呼ぶことが大切です。
2 自転車側が適用できる保険があるかを確認する
 まずは、自転車保険に入っているかを確認します。
 自転車保険を使用できれば、治療費や慰謝料などについて、最終的には、保険会社が支払うことになるため、スムーズに支払いを受けやすくなります。
 また、自転車に保険を付けていない場合であっても、自転車の運転手ご自身やそのご家族が自動車保険などに加入しており、その自動車保険などで日常生活で他人を怪我させた場合に補償できるものに入っていれば、その保険が使用できる可能性があります。
 そのため、まずは、自転車に保険を付けているか確認し、無い場合には、自動車保険などで使用できるものがないか確認する手順がオススメです。
3 歩行者側の保険を確認する
自転車側が保険に入っていない場合には、ご自身側の保険を使った方がスムーズなことがありますので、ご自身の加入している自動車保険などで、歩行中で相手方が自転車の場合でも適用できる内容かを確認しておくことがオススメです。
4 自転車側が保険に入っている場合には、賠償金の提案金額に注意
 自転車側が保険に入っている場合には、保険会社が賠償金を計算して、提案してくることが多いです。
 この場合に、提案された賠償金が相場より低額であることがありますので、示談前には交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

 このように、歩行者が被害者になった場合の歩行者と自転車の事故については様々な注意点があります。
 自転車事故でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

追突事故の過失割合に関する注意点

交通事故に関するご相談の中で、追突事故の過失割合について相談される方がいらっしゃるので、今回は、追突事故の過失割合に関する注意点についてお話しします。

追突事故の場合には、基本的には、追突した車両の運転者の一方的な過失にされることが多いです(過失割合は、追突された車両の運転者が0対追突した車両の運転者が100)。
もっとも、追突された車両が急ブレーキをかけたため追突された場合には、基本的過失割合が、追突された車両30対追突した車両70になります(別冊判例タイムズ38【154図】)。
なお、危険を防止するためにやむを得ない場合に急ブレーキをかけたときには、前記の基本的過失割合にならないことは要注意です。

その他、追突のように見えても、実際は、車線変更直後に追突された事例には注意が必要です。
この場合には、車線変更事案として扱われることが多く、四輪車同士の基本的過失割合が、車線変更した車両(追突された車両)の運転者70対直進していた車両(追突した車両)の運転者30になります(判例タイムズ38【153図】)。
車線変更事案として扱われるか追突事案として扱われるかは、当事者の具体的な位置関係などによって異なります。

このように、追突事案のようであっても、急ブレーキの有無、急ブレーキをかけた理由、車線変更事案として取り扱われるか否か、などによって、基本的過失割合が大きく異なってきます。
事故状況に争いが生じた場合には、証拠の有無によって事実が認定されるが決まってしまうため、証拠が大切になります。
ドライブレコーダーはもちろんですが、周囲の防犯カメラの映像、警察が作成する実況見分調書や目撃者の供述なども重要です。
実況見分調書は人身事故扱いでないと作成されないものになるため、過失割合に関して争いを残さないためには、人身事故扱いに切り替えた方が良いです。
過失割合でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみるのも一つだと思います。

信号のない十字路の交差点における自転車対自動車の事故の過失割合について

交通事故案件のご相談を多く承っていると、信号のない十字路の交差点における直進同士の自転車対自動車の過失割合についてのご相談が多くあります。
そこで、今回は、その場合の過失割合についてお話ししたいと思います。

まず、自動車に一時停止規制がある場合の基本的過失割合は、自転車10対自動車90です(別冊判例タイムズ38・243図)。
次に、双方の道路に規制がない同幅員の場合の基本的過失割合は、自転車20対自動車80です(別冊判例タイムズ38・240図)。
さらに、自転車に一時停止規制がある場合の基本的過失割合は、自転車40対自動車60です(別冊判例タイムズ38・244図)。
そして、自動車の方が優先道路(自動車側のセンターラインが交差点の中でも引かれている道路)の場合の基本的過失割合は50対50です(別冊判例タイムズ38・246図)。

裁判所は、事故状況から基本的過失割合を導き、そのうえで修正要素がある場合には、基本的過失割合を修正して、過失割合を判断することが一般的です。
たとえば、自動車の運転手が酒気帯び運転であった場合には、修正要素である「著しい過失」にあたり、10%修正されることが一般的です。
そのため、前記のとおり、双方の道路に規制がない同幅員の場合の基本的過失割合は、自転車20対自動車80ですが、自動車側が酒気帯び運転の場合には、その他の修正要素がない限り、10%修正し、自転車10対自動車90となる可能性が高いです。

なお、修正要素が存在することを証明する責任は、基本的には、修正要素によって有利になる方が負います。
修正要素を証明するうえでは、ドライブレコーダー映像などがあると良いです。
ドライブレコーダーの映像は、SDカードなどの記録媒体に保存される形式が多いですが、事故後、すぐに記録媒体を抜き取っておかないと、場合によっては上書きされてしまい、事故状況の映像が消えてしまうことがあるため、要注意です。

このように、過失割合の判断は、基本的過失割合を知るだけではなく、修正要素の有無も大切になりますので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合について

交通事故の相談の中で、信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合についてご相談いただくことも多いです。
そこで、今回は、信号のない交差点での出会い頭の事故の過失割合についてお話ししたいと思います。

交通事故の過失割合については、裁判例の集積が多くされており、別冊判例タイムズ38に過失割合についてのその考え方が記載されています。
たとえば、センターラインのある優先道路(交差点内にもセンターラインが入っている道路)を直進していた自動車Aと脇道から出てきた直進自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA10対B90です(105図)。
また、一時停止規制のない道路を直進していた自動車Aと一時停止規制のある道路を直進していた自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA20対B80です(104図)。
その他、優先道路や一時停止規制もなく、道路の幅員も同程度の十字路の交差点の場合の基本的過失割合は、左方車A40対右方車B60になります(101図)。

過失割合を認定するためには上記基本的過失割合から修正要素があるかを吟味し、なければ基本的過失割合で過失割合を認定することになります。
たとえば、一時停止規制のない道路を直進していた自動車Aと一時停止規制のある道路を直進していた自動車Bが衝突した場合の基本的過失割合はA20対B80ですが、Bが一時停止をしたうえで左右の安全確認を行いAの接近を認めたものの、その速度と距離の判断を誤って交差点に進入した場合には、修正要素にあたるため、その他の修正要素がない限り、過失割合はA40対B60になります。
修正要素は事故状況によって異なりますが、その内、著しい過失や重過失などが修正要素となっていることも多く、何が修正要素にあたるかは事案によって様々です。

過失割合については、基本的過失割合を知るだけでなく、修正要素が何かを知ることも大切ですので、お悩みの方は一度交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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交通事故での治療を継続していたときに、再度、事故に遭ったらどうすべきか

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今回は、よく質問のある、交通事故での治療を継続していたときに、再度、事故に遭ったらどうすべきかについてお話ししたいと思います。

まずは、すぐに整形外科で受診し、症状を伝えた方が良いです。
以前の事故で通院している整形外科で受診することが多いとは思いますが、症状を漏れなく伝えることはもちろんですが、前の事故で負傷した箇所の症状が悪化している場合にはその旨をしっかり伝えた方が良いです。

前の事故と同じ箇所を負傷して症状が悪化している場合には、異時共同不法行為として後の事故の保険会社が一括対応を行うことが多いです。
もっとも、前の事故と後の事故で負傷箇所が異なる場合には、異なる負傷箇所のみ前の事故の保険会社が一括対応を行うこともあります。
いずれにしても、整形外科などの医療機関、それぞれの事故の保険会社の担当者と適切に情報共有を図りながら対応していくことが大切です。

万が一症状が治らなかった場合に、後遺障害申請を考えられる方がいらっしゃいますが、2つの事故が影響して症状が残ったことが明らかな方が後遺障害認定でも有利になりやすいです。
症状が残ってしまった際に後悔しないためにも、事故により悪化している場合には、しっかりと主治医に伝えることが大切です。

異時共同不法行為の事案で後遺障害申請を行う場合には、後遺障害診断書に2つの事故により症状が残ったことを記載することが大切です。
1つの事故のことのみ記載されている場合には、基本的には、もう一方の事故の影響が無いものとして、後遺障害等級認定申請の審査が進んでしまいます。

なお、異時共同不法行為の場合には、基本的には二つの自賠責保険が使えるため、傷害分であれば120万円×2=240万円まで自賠責保険から治療費等の支払いを受けられる可能性があります。

いずれにしても、2つ事故が重なるケースは注意すべき点が多くありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。