後遺障害等級認定申請と異議申立

交通事故により受傷した方で、治療を継続したにもかかわらず症状が残存してしまった場合には、後遺障害の認定を受けることを考えられる方も多いです。
そこで、今回は、後遺障害等級認定申請と異議申立についてお話ししたいと思います。

1 後遺障害等級認定申請
後遺障害等級認定申請は、自賠責保険会社に対して必要書類を提出し、後遺障害の審査を求めるものです。
後遺障害等級認定申請には、任意保険会社経由で申請する事前認定の方法と被害者またはその代理人(弁護士等)が直接申請する被害者請求の方法があります。
どちらも必要書類を提出することに変わりはありませんが、必要書類以外も添付すべきか、そうでないか、により結果が変わることもあります。
たとえば、むちうち症の方で、診療録(カルテ)の記載では、一部に「雨の日首が痛い」と書かれたカルテがあった場合に、この一部のカルテだけを抜粋して提出すれば、実際には常時痛であったとしても常時痛ではないと誤解されて、後遺障害が認定されないことがあります。
この場合には、カルテを全体的に見て、常時痛であることが明らかであればすべてのカルテを提出した方が良いですし、そもそもの誤解を与えないためにカルテを提出しない方が良いこともあります。
このように、必要書類以外で提出した方が良いものと提出しない方が良いものとがありますので、いずれにしても後遺障害等級認定申請前には後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
2 異議申立
後遺障害等級認定申請を行ったものの、その結果に不服がある場合には、異議申立を行うことができます。
後遺障害等級認定申請の結果に至った理由を確認したうえで、必要があれば新しい証拠を添付して異議申立を行うことが有効であることもあります。
たとえば、右手首のTFCC損傷で後遺障害等級認定申請を行ったものの、明らかな外傷性の異常所見を認めないとの理由で、後遺障害が認められなかった場合には、主治医に相談したうえで、外傷性の異常所見が分かる画像を出力して指摘してもらい、異議申立を行うことが有効であることもあります。

適切な等級を認定されるためには、後遺障害等級認定申請に関する豊富な知識が必要であることも多いため、後遺障害でお悩みの方は、一人で悩まず、後遺障害に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

証明責任(立証責任)について

交通事故のご相談の中で「相手方が争ってきて、証拠がない場合にはどうなるのですか?」という質問が多くあります。
裁判では証明責任(立証責任)によって判断されることになります。
そこで、今回は、証明責任(立証責任)について、お話ししたいと思います。

証明責任(立証責任)とは、主要事実が真偽不明である場合に、その事実を要件とする自己に有利な法律効果が認められない一方当事者の不利益負担のことです。
基本的には、権利を主張する側が証明責任を負います。
たとえば、金銭の貸し借りの事案であれば、貸した側が貸したことを証明する必要があります。
この場合、証拠との関係では、貸す際には、借用書に一筆もらうなど、証拠を作成する機会があります。
そのため、金銭を貸した事実について、争われ、貸したことについて真偽不明となった場合に、貸した側の請求が認められないことは公平だといえます。
しかしながら、交通事故などの不法行為事案では、事後に証拠が作成されることになるため、どうしても証拠が薄くなる傾向があります。
そのため、しっかりとした証拠が残っていない場合に、真偽不明になることが多くあるため、証拠を残すことがより大切になります。
たとえば、治療経過の証拠として、病院のカルテ(診療録)がありますが、カルテの内容で症状が一貫していることが読み取れない場合には、実際には、症状が一貫している場合であっても、賠償金を減額されてしまうことがあります。
そのため、診察の際の言動には注意が必要で、毎回、医師に症状をしっかりと伝えることが大切です。
また、他覚的所見のない打撲、捻挫などは、骨折事案と比べて、客観的証拠が薄くなる傾向があるため、症状を立証するうえで通院の事実がより重要になりますので、適切な頻度で通院することが大切です。
特に、他覚的所見のない打撲、捻挫の症状の後遺障害等級認定申請においては、後遺障害認定の可否に通院頻度が大きく影響します。
そのため、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。

自動車保険の見直しについて

交通事故案件を取り扱うことが多いですが、その中で、ご自身に合っていない自動車保険の内容になっているケースを目にします(保険料の兼ね合いもあるとは思います)。
交通事故に遭ってから、ご自身の保険の内容を初めて理解する方もいらっしゃいますが、できれば、交通事故に遭う前に保険の見直しなどを行い、ご自身に合った保険に加入できた方が良いと思います。
そこで、今回は、自動車保険の内容についてお話ししたいと思います。

1 対人賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者を傷つけてしまった場合に、そのお怪我に関する損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

2 対物賠償保険
ご自身に過失が生じる事故で、第三者の車両などの物を壊してしまった場合に、その損害を賠償するための保険です。
上限額は無制限で入ることがお勧めです。

3 人身傷害保険
事故によりご自身が負傷した場合に、ご自身のお怪我に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
人身傷害保険を使用しても、等級には影響しないことが多いため、入っておくことをお勧めします。

4 車両保険
事故によりご自身の車両が壊れた場合に、車両に対する損害を補償する保険です。
特に、ひき逃げで相手方が見つからない事故や相手方が任意保険に加入していない事故、過失割合が生じる事故などで活躍する保険です。
車両が高額な場合には、加入した方が良いですが、車両がそれほど高額でない場合には、車両保険をつけることにより保険料がどのくらい変わるかを確認した上で、加入するか決めることをお勧めします。

5 弁護士費用特約
相手方に自動車事故に関する賠償請求するために弁護士に相談する費用や依頼する費用を補償する保険です。
300万円が上限額となっている保険会社が多いです。
弁護士費用特約は、使える人の範囲が広く、本人、配偶者、同居の親族、未婚の子、対象自動車に同乗していた方、などが使えるとしている保険会社が多いです。
一家に一つ弁護士費用特約があれば十分といえます(保険会社によっては範囲が異なるため注意が必要です)。
弁護士費用特約は、付けることによる保険料の増額はそれほど大きくない一方で、使える人の範囲が広いので、付けることをお勧めします。

上記のほか自動車保険の種類は様々ですので、保険代理店に相談して保険の見直しを行うことをお勧めします。
また、実際、事故に遭われてしまった場合には、ご自身の加入する保険を使用した方が得になることもありますので、交通事故でお悩みの方は弁護士に相談してみるのも一つです。

物的損害の流れについて

交通事故のご相談を受けていると、「被害事故で車が壊れたのですが、今後、どのような流れになりますか?」といったご質問がしばしばございます。
そこで、今回は、物的損害に関する解決までのおおまかな流れをお話ししたいと思います。

まず、全損(修理が不可能、または、修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が高い場合)か、分損(修理費と車両の時価額を比較して修理費の方が低い場合)か、によって流れが異なってきます。

一見して全損の場合には修理工場に入庫せずに、相手方保険会社と時価額の交渉になることが多いです。
また、一見して全損か分からない場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、そのうえで、修理費と車両の時価額を比較して車両の時価額が低いことが分かれば、全損ということになります。
全損の場合には、時価額+買替諸費用のうち一部の項目について、賠償金を受け取り、解決することが多いです。
もちろん、修理するかは被害者の自由ですので、賠償金を修理費の一部に充てて、修理することもできます。
もっとも、修理費と時価額等の差額が自己負担となってしまうため、修理される方は少ないかもしれません。
なお、全損の場合の時価額について交渉するときに気を付けるべきポイントや買替諸費用のうちどのような項目が賠償金として認められるかは、以前の私のブログでお話ししておりますので、そちらを参考にしていただけますと幸いです。

分損の場合には、修理工場に入庫し、保険会社のアジャスターと修理工場が修理費の協定を行い、修理され、修理費が修理工場に支払われて解決することが多いです。
もちろん、修理をせずに、修理費相当額を受け取って解決することも可能です。

以前の私のブログで、代車代について、注意すべきことをお話ししておりますので、そちらも参考にしていただけますと幸いです。

このように、物的損害については、全損か、分損かによって流れが異なってきますので、物的損害でお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

後遺障害等級認定申請の認定機関について

今回は、後遺障害等級認定申請の認定機関についてお話しします。
治療を継続したものの症状が残ってしまった場合には、後遺障害認定のために、後遺障害等級認定申請を行う被害者もいらっしゃいます。
この後遺障害等級認定申請の認定機関は、形式的には、相手方の自賠責保険会社になりますが、実質的には、損害保険料率算出機構になります。
後遺障害等級認定は必要書類を自賠責保険会社に提出しますが、自賠責保険会社は、その必要書類を損害保険料率算出機構に送付し、実際に、調査や審査を行うのは損害保険料率算出機構になります。
損害保険料率算出機構の調査が完了した後、損害保険料率算出機構から自賠責保険会社に調査結果が送付され、その調査結果に基づいて、自賠責保険会社で後遺障害等級認定申請の回答が出されるという流れになります。

後遺障害の認定基準について、細かい基準や実際の運用は外部に非公開の情報になります。
また、担当者や後遺障害の申請時期などによっても若干の差が出るとも言われています。
そのため、後遺障害は申請してみないと、認定されるかは分からないものになります。
一方で、後遺障害診断書や経過の診断書、カルテなどに明らかに不利な記載がある場合には、後遺障害が認定されない可能性が高いと分かるケースもあります。
いずれにしても、後遺障害でお悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

後遺障害等級認定申請は、任意保険会社経由で申請する方法(事前認定)と被害者またはその代理人が、直接、自賠責保険会社に申請する方法(被害者請求)があります。
事前認定の場合には、提出した方が有利な書類が添付されていなかったり、提出することで不利になる書類が添付されて申請されることがあります。
そのため、基本的には、後遺障害等級認定申請は被害者請求で行うことをお勧めします。

後遺障害については、気を付けるべきことが多くありますので、お悩みの方は、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

自損事故で負傷した場合の対応方法

今回は、自損事故で負傷した場合の対応方法についてお話しします。
自損事故で負傷した場合には、自己負担で治療費の支払いをせざるを得ないと考える方が多いです。
しかしながら、人身傷害補償保険や自損事故対応の保険を使用して、治療費が支払われることがあります。
その際、自動車に乗ってる時の自損事故であれば、その自動車に付帯されている保険を確認することはもちろんですが、ご家族の方が加入している自動車保険が使えるケースもありますので、ご家族の保険まで確認することをお勧めします。
なお、人身傷害補償保険が使える場合には、治療費だけでなく慰謝料なども支払われることが一般的ですので、確認することをお勧めします。

また、自動車保険等が使えない場合であっても、通勤中や業務中の事故の場合には、労災保険が使える場合があります。
労災保険が使用できる場合には、治療費や休業補償の一部が支払われることがあります。
たとえば、労災保険が使える自損事故により休業した場合には、労災の休業補償として平均賃金の60%を給付日額として支払われることがあります。
さらに、上記休業補償とは別枠で、平均賃金の20%を給付日額として休業日に応じて休業特別支給金が支払われることがあります。

労災保険の休業補償給付と合わせて特別支給金の申請をした方が、全体で、日額の80%を補償されることになりますので、是非、ご活用ください。

人身傷害保険を使用して休業補償として10割受け取り、かつ、労災の特別支給金で20%受け取ることも可能ですので、特別支給金の申請は忘れずに行っておきたいところです。
なお、労災保険からは慰謝料は支払われません。

自動車保険も使用できず、労災保険も使用できない場合には健康保険を使用して通院する形になりますが、上記のとおり、自損事故の場合であっても、自動車保険が使えることがあり、労災保険が使えることもありますので、自損事故を起こした場合には、ご自身の保険はもとよりご家族の保険、労災保険が使えるかなどを確認することをお勧めします。

裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?

法律相談を行っていると、よく、「裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼できますか?」との質問を受けることがあります。
もちろん、裁判をしたくない場合でも弁護士に依頼することは可能です。

弁護士に依頼すると裁判になるというイメージが強いかもしれませんが、実際、弁護士の業務は幅広く、裁判だけでなく、示談交渉、契約書のリーガルチェックなど様々です。
そのため、弁護士に依頼するときに、受任範囲(委任範囲)を示談交渉に絞って依頼すれば、安心です。

私が多く扱っている交通事故分野においては、実は、示談交渉で解決するケースがほとんどです。
保険会社も被害者の方も早期に解決したいという意向が同じであることが多く、示談で解決することが多いのが実態です。
もちろん、保険会社が適切な賠償金を提示しないために、裁判になるケースもありますが、あくまで依頼者の方が望んだ場合に、訴訟(裁判)を提起する形になります。

交通事故案件で弁護士に依頼すると、法的なアドバイスを受けられることはもちろんですが、交渉を任せることができるため心理的負担の軽減につながることが多く、治療に専念しやすくなることがあります。
そのようなメリットに魅力を感じる一方で、「弁護士に依頼すると裁判になってしまうのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、依頼するかはともかく、一度、詳しい弁護士に相談してみるのが良いと思います。
特に、交通事故分野では、弁護士が入っていないケースの場合、低額な賠償金が提示され、そのまま示談してしまうことも少なくありません。
保険会社は交通事故の対応経験が豊富である一方で、被害者の方は、事故の経験が少なく、場合によっては初めて事故に遭われた方も多いらっしゃいます。
そのような中で、ご自身の判断で示談してしまい、後で、適切な賠償金よりも低額であったことを知った時に後悔してしまう方もいらっしゃいます。
依頼するかは相談後に決めれば良いことなので、後悔しないためにも、詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

減収がない場合の後遺障害逸失利益の算定について

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が認定された場合に、後遺障害がなかったのであれば得られたであろう収入等の利益をいいます。
減収がない場合には、基本的には後遺障害逸失利益が認められないため、この点についてお話ししたいと思います。

後遺障害逸失利益の計算方法は、一時金賠償の場合、一般的には、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数、により算出します。
たとえば、令和2年4月1日以降の事故、事故前年度の年収が700万円のサラリーマンの男性で、後遺障害等級第8級が認定された場合、症状固定時の年齢が42歳であれば、一般的には、700万円×45%(後遺障害等級第8級相当の労働能力喪失率)×17.4131(67歳までの労働能力喪失期間25年に対応するライプニッツ係数)=5485万1265円となります(事案の内容や証拠の内容によっても異なります)。

もっとも、後遺障害が認定された事例で、減収が無い場合には注意が必要です。
最高裁判所の判決(最判昭和56年12月22日)で、減収がない事案において、「特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害を認める余地はない」と判断しており、この「特段の事情」について、「たとえば、事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって、かかる要因がなければ収入の減少を来たしているものと認められる場合とか、労働能力喪失の程度が軽微であっても、本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし、特に昇給、昇任、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがあるものと認められる場合など、後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情の存在を必要とするというべき」としています。
このように、裁判所の判断では、減収がない場合には、基本的には、後遺障害逸失利益が認定されないことになります。

後遺障害逸失利益に関しては、様々な裁判例がありますので、お悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

車両の写真の重要性

交通事故においては車両の写真が非常に重要な証拠になることがあります。
車両が壊れていることの証明に役立つことはもちろんですが、傷の具合からどの程度の衝撃があったかを把握するためにも有益である一方、損傷具合から車両が停止していたかが分かる場合もあります。
すなわち、物的損害の損害額の証明のためだけでなく、人的損害(お怪我に関する損害)や過失割合に関する重要な証拠になることがあります。
交通事故は、突然、起こってしまうため、車両の写真を撮ることに思い至らない方が多いとは思いますが、できる限り、車両の写真を撮っていただくことが望ましいです。
交通事故に遭わないことが一番ですが、万が一、交通事故に遭われた際は、車両の写真をお撮りいただくことをお勧めします。
また、交通事故にお悩みの方は交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故案件におけるカルテの重要性について

今回は、交通事故案件におけるカルテの重要性についてお話しします。

交通事故案件で、訴訟(裁判)になると、基本的には、通院した各医療機関等にカルテ(診療録)を開示するための文書送付嘱託がされます。
裁判では、カルテの記載内容から、症状の出現時期、一貫性、症状の程度、他覚的所見の有無、症状固定時期、など様々な要素を把握します。
医学に関係する物事で、カルテに記載のないことは、基本的には、無いものとして扱われてしまうことが多いです。
そのため、カルテの記載内容は、裁判において重要です。

医師の前で話したことがカルテに記載されることがありますが、診察を受けるときには、患者に有利な事実がカルテに必ず記載されるとは限らないことに注意した方が良いです。
有利な事実であれば、しっかり伝えてカルテに記載してもらうようにすることを意識すると良いと思います。

過失割合が生じる事故と車両保険について

今回は、よくご相談のある過失割合が生じる事故と車両保険についてお話ししたいと思います。
車両保険は、ご自身の車両が損傷した場合に、その修理費等に相当する金額を支払う保険です。
全損の場合(車両の修理が不可能な場合や車両の時価額より修理費が低額である場合)には、車両の時価額相当の金額が支払われることが多いです(新車特約などが使える場合には異なります)。

この車両保険は、特に、過失割合が生じる事故の場合に、活用した方が良い事案が多くあります。
たとえば、過失割合が3対7、車両が全損の評価を受け、時価額が100万円の事案の場合には、①車両保険によって100万円得られる可能性がある一方で、②相手方からの賠償金は70万円(100万円×0.7)になる可能性があります。
仮に車両保険を使用することで、保険料が15万円上がるとすると(保険会社とその保険契約の内容によって保険料の上がり幅は異なります)、車両保険で受け取れる金額100万円-保険料上昇による支出15万円=85万円>相手方からの賠償金は70万円、となるため、車両保険を使った方が15万円得することになります。

このように、過失割合等によっては、被害事故の場合であっても車両保険を活用した方が良い事案もあります。
過失割合や車両保険の活用についてお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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後遺障害等級認定申請と異議申立

交通事故により負傷された方で後遺障害等級認定申請を行ったものの、後遺障害が認められなかった場合に、異議申立を考える方がいらっしゃいます。

交通事故案件を集中的に取り扱っているとしばしば異議申立に関するご相談がございます。

そこで、今回は、異議申立の注意点についてお話しします。

交通事故によりいわゆるむち打ち症になった方の場合には、治療状況等を勘案したうえで将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことを理由に後遺障害が認められないことがあります。
この場合には、様々な方法が考えられますが、一つの方法として、症状固定から一定期間経過後も治療を続けたが症状が残っていることなどを診断書などに記載してもらい、異議申立を行うことが考えられます。
治療のためにも、主治医に上記診断書等の作成を協力してもらうためにも、症状固定後も定期的に通院することが大切です。

また、骨折等による可動域制限が残存した場合において、画像上の異常所見が明らかではないとして、後遺障害が認定されないものがあります。
この場合には、主治医に画像上の異常所見を示してもらい、書面化したうえで、異議申立を行うことが考えられます。

異議申立の結果に大きく関わるものとして、初回の後遺障害等級認定申請において提出した書類の内容があります。
たとえば、初回の後遺障害等級認定申請でカルテ等を提出しており、そのカルテの記載内容として、度々、「症状改善」、「症状軽減」などの症状が改善する傾向が記載されている場合には、異議申立を行ったとしても、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉えがたいと判断される可能性が高いです。
初回の後遺障害等級認定申請において提出した書類の内容が最終的な結果に大きく関わることがあるため、事故当初の段階から主治医に適切な症状を伝えること、後遺障害申請前に提出書類の内容をチェックすることなどが大切です。
そのため、できる限り早い段階から交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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証拠上受傷態様が軽微であると評価される事故についての注意点

証拠上、受傷態様が軽微であると評価される事故について注意すべき点がありますので、今回は、このことについてお話します。

受傷態様が軽微と評価される事故は様々ですが、たとえば、クリープ現象による追突、ミラー同士のみの接触、二輪車において転倒していない事故、物損が軽微である事故、などがあります。

このような受傷態様が軽微と評価される事故は、実際に負傷しているにもかかわらず、自賠責保険による支払いが受けられない場合があります。
そのため、自賠責保険に対する被害者請求をするのか、それとも、任意保険からの一括対応で支払いを受けるのか、の判断が極めて重要になります。

たとえば、受傷態様が軽微と評価される事案において、自賠責保険による支払いがおおよそ受けられそうにない場合には、被害者請求をしてしまうと、事故と受傷との相当因果関係が否定され、治療費や慰謝料が支払われないことがあるので、注意が必要です。
このような事案の場合には、任意保険会社から一括対応による支払いを受けるか、もしくは、人身傷害特約を使える方は人身傷害特約によって支払いを受ける方が有利になる場合があります。

もっとも、人身傷害特約を使用する際に、事前に、任意保険会社から、自賠責保険の支払いを受けられるかの調査がされることもあります。
この調査結果によっては人身傷害特約からの支払いを受けられないことがあります。
そのため、このような場合には、人身傷害特約を使うよりも、直接、自賠責保険会社に請求する被害者請求の方が、自賠責保険からの支払いが受けやすいことがあります。

また、相手方の任意保険会社が調査した結果、受傷態様が軽微であるとして、自賠責保険からの支払いが受けられなかった場合には、人身傷害特約による支払いも受けられなくなることがありますので、この点も注意が必要です。

この場合にも被害者請求の方が自賠責保険からの支払いが受けやすいことがあります。

このように、証拠上、受傷態様が軽微であると評価される事故については様々な注意点があります。
交通事故でお悩みの方は、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

過失割合について

私の取り扱う交通事故案件の中で過失割合についてのご相談も多くあります。
そこで、今回は過失割合についてお話ししたいと思います。

過失が生じる事故の場合、ご自身の過失分は自己負担になります。
たとえば、過失割合が当方40対相手方60、治療費100万円、通院交通費1万円、慰謝料99万円、全損害額合計200万円の場合には、200万円×60%(40%は自己負担)=120万円が賠償金として認められることになります。
上記賠償金は、治療費を含む金額になりますので、保険会社が一括対応で各医療機関に治療費を支払っている場合には、120万円-治療費100万円=20万円が支払われるべき賠償金になります(その他支払われた金額があればその金額も差し引かれることになります)。

もっとも、過失割合が生じる事案において、人身傷害特約(ご自身の加入する保険で、ご自身のお怪我に関する損害を補償する保険)が使える場合であれば、人身傷害特約によって、ご自身の過失による負担分が概ね支払われることがあります。

また、自賠責保険では、傷害分(死亡と後遺障害を除く)の場合、ご自身の過失が7割以上ない限りは、自賠責保険で定める上限(傷害分は120万円)と基準内において、過失割合によって減額がされません。

過失割合が当方50対相手方50、通院期間90日、実通院日数45日、治療費39万円、通院交通費1万円、休業損害なし、完治した事案(令和2年4月1日以降に発生した事故)で計算していきます。
令和2年4月1日以降に発生した事故の自賠責基準の慰謝料は、①総治療期間×4300円、または、②実治療日数×2×4300円、です(令和2年3月31日以前の事故の場合、日額は4200円です)。
そうすると、①総治療期間90日×4300円=38万7000円、②実通院日数45日×2×4300=38万7000円、となりますので、自賠責基準の慰謝料は、38万7000円になります。
そうすると、治療費39万円+通院交通費1万円+慰謝料38万7000円=78万7000円、が自賠責保険から支払われることになります。

このように、過失が生じる事故の場合には、様々考慮すべき事柄がありますので、お悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

被害者請求と因果関係

以前、当ブログで被害者請求についてお話ししましたが、今回は、被害者請求に関する因果関係についてお話しします。
被害者請求とは、被害者またはその代理人が、直接、相手方の自賠責保険会社に対して、被害者に生じた損害(治療費・交通費・休業損害・慰謝料など)を請求することをいいます。
自賠責保険における傷害分(後遺障害・死亡による損害を除く)の上限額は120万円です。
そのため、主に治療費・交通費・休業損害・慰謝料の合計で120万円まで自賠責保険にて支払われることになります(あくまで支払基準は自賠責基準になります。)。

保険会社が一定期間一括対応を行い、治療費等の合計額で120万円まで満たない段階で一括対応を打ち切った場合において、その後に生じた治療費等を被害者請求によって回収する対応が考えられます。
もっとも、因果関係が否定される可能性のある案件では、被害者請求を行うかは慎重に判断すべきです。
ミラー同士の接触、物損が軽微、駐車場内における事故、など比較的受ける衝撃が小さいと判断される場合には、事故と負傷との間の因果関係が否定される可能性があります。
因果関係が否定された場合、慰謝料等が認められないだけでなく、保険会社が一括対応により支払った治療費等の内払金の返還を求められることがあります。
このように、被害者請求を行うか否かの判断をされる際には、特に、因果関係に注意が必要です。
被害者請求を行うか否かを判断される場合には、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

一括対応と一括対応の打ち切りについて

交通事故に遭うと、加害者が任意保険(対人賠償保険)に加入している場合には、加害者の加入する任意保険会社(以下、「相手方保険会社」といいます)が一括対応を行うことが多いです。

一括対応がされると、相手方保険会社は被害者に生じる治療費を直接医療機関に支払うことが通常であるため、通常、被害者は窓口負担なく通院することができます。そこで、今回は、よくご相談のある一括対応と一括対応の打ち切り、についてお話しいたします。

保険は、自賠責保険と任意保険があり、自賠責保険で支払いきれない部分を任意保険が負担する構造になっていますが、自賠責保険と任意保険を任意保険会社が一括して支払うことを一括対応といいます。

保険会社が一括対応を打ち切ることがありますが、実は、保険会社は独自の判断で一括対応を打ち切ることができます。一括対応の打ち切りは通院を禁止・制限するものではないため、症状が残る間は、基本的には、通院を続けて、立て替えた治療費を相手方に請求することになります(もっとも、治療費が回収できるかは事案の内容等によって異なります)。

一括対応の打ち切り後、通院頻度が極端に落ちる方や通院されない方がいらっしゃいますが、治療に対しての影響だけでなく、後遺障害や賠償金にも影響することがありますので、基本的には、通院を継続することをお勧めします(もっとも、治療費が回収できるかは事案の内容等によって異なります)。
相手方保険会社から打ち切りの話をされた際、症状が残っており、一括対応を延長できないか相手方保険会社に交渉される方もいらっしゃると思います。

相手方保険会社は、①治療に関する医師の見解(症状固定時期)、②症状の経過(徐々に良くなっているかなど)、③受傷態様(事故状況・物損の状況なども考慮されます)、など、様々な要素を総合的に考慮して一括対応を延長するかを判断することが多いです。

そのため、相手方保険会社に一括対応の延長の交渉をするときにも、ご自身で症状の経過を伝えて交渉したものの、相手方保険会社が一括対応の延長を行わない場合には、症状固定時期に関する医師の見解などの交渉材料を集めて、再度、交渉することが有効な場合もあります。

いずれにしても、相手方保険会社から打ち切りの話が出た場合には、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

代車料について

交通事故で車両が壊れた場合、被害者は加害者に対して物的損害を請求することができます。
物的損害には、様々なものがありますが、今回は、事故の早い段階で注意すべき賠償項目である代車料についてお話しいたします。

交通事故により所有車が損傷した場合、代車を借りる方も多いと思います。
しかし、代車料が無条件で賠償金として認められるとは限らないことに注意が必要です。
たとえば、車両を複数所有している方が、特に代車がなくても日常生活に支障がないにもかかわらず、代車を借りる場合には、代車料が賠償金として認められる可能性は低いです。
これは、代車の必要性(代車の使用が日常生活に必要であること)がないと認定される可能性が高いためです。
一方で、通院、通勤、日常の買物、外出等に使用するために代車を使用した事案において、代車料を賠償金として認めた裁判例があります(東京地裁平成6年10月7日判決)。
このように、代車の必要性については注意が必要です。

代車の必要性がある場合であっても、代車料が認められる期間が限定されることが多いです。
一般的には、分損(修理費よりも車両の時価額が高い場合)においては、1~2週間程度、全損(修理が不可能の場合、または、修理費よりも車両の時価額が低い場合)においては、1か月程度が認められることが多いです。
上記のような代車料の認められる期間からすると、事故後、速やかに修理するか買い換えるか決断をしないと、発生した代車料のうち最終的に自己負担になってしまうことがあります。
ですので、代車料については、できる限り早めの対応が必要になります。

また、仮に代車が必要になった場合であっても、実際に代車をしていない場合や代車料の支出がなかった場合には、賠償金として認められません。

このように、代車料については、注意点が多数あります。代車料でお悩みの方は、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

主婦の休業損害にご注意を

交通事故案件の中には,保険会社から示談金の提案がされたものの,本来得られるべき項目が含まれていないものがあります。
交通費や休業損害など様々な項目がありますが,その中でも特に見逃しやすいのが主婦の休業損害です。
そこで,今回は,主婦の休業損害についてお話しします。

第三者のために家事に従事する方が事故による影響で家事ができなくなった場合に,主婦の休業損害が認められます。
一般的には,現在の女性の平均賃金を基準にして日額を算出するため,日額約1万円が目安になります。

主婦の休業損害が認められることをご存知ない方が多いこともあり,保険会社から提案された示談金の内訳について,休業損害が0円になっていても,そのまま見逃して示談してしまう方も多くいらっしゃいます。
一般的には,示談後にその金額を争うことはできないため,示談後では手遅れになって
しまいます。
示談金の提案があった場合,主婦の方は,主婦の休業損害が認められているかを特に注意して確認することをお勧めします。

また,示談金の中に主婦の休業損害が認められている場合であっても,示談金額が相場より低額であることも少なくありません。
保険会社は,主婦の休業損害について自賠責基準である日額6100円(令和2年4月1日より前の事故の場合には5700円)で提案することがあります。
しかしながら,先ほどお話ししたとおり,日額は約1万円が目安であり,自賠責基準の金額では相場より低額であることが多いです。
示談金額にも注意して確認することをお勧めします。

パートをしている兼業主婦の方であっても,自賠責基準では,週30時間未満の勤務時間の場合には,自賠責基準での主婦の休業損害が認められます。
上記はあくまで自賠責保険での取り扱いに過ぎないため,パートで週30時間以上勤務している方や,正社員で働かれている方などの場合であっても,主婦の休業損害が認められることがあります。
主婦の休業損害でお悩みの方は一度,交通事故案件を多く取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

ライプニッツ係数の変更

民法改正により,法定利率が従来の5%から3%に変わりました。
民法改正により令和2年4月1日以降発生の交通事故(厳密にはどの時点を基準とするかは説の対立があります。)についてはライプニッツ係数が変わります。
多くの裁判において,ライプニッツ係数を用いて後遺障害逸失利益が算出されてきたので,今回のライプニッツ係数の変更は,後遺障害逸失利益の計算に大きな影響を与えます。

後遺障害逸失利益とは,後遺障害がなかったのであれば得られたであろう利益をいいます。
定期金賠償でない場合には,一般的には,①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(場合によってはホフマン係数を用いることもあります。)という計算式により,後遺障害逸失利益を算出します。

法定利率が従来の5%から3%(今後3%からさらに法定利率が変更される可能性があります。)に変更されることにより,ライプニッツ係数が,たとえば,1年の場合は0.9524から0.9709,5年の場合は4.3295から4.5797,10年の場合は7.7217から8.5302,15年の場合は10.3797から11.9379,20年の場合は12,4622から14.8775,に変更になります。
これにより,改正後の民法が適用される事案において,定期金賠償ではない場合には,従来より後遺障害逸失利益の金額が増えることが想定されます。

たとえば,平成30年の事故で,症状固定日が平成31年(令和元年)である場合に,事故前年度の収入が600万円,症状固定時の年齢が47歳,後遺障害第7級が認定された場合には,①基礎収入600万円×②労働能力喪失率56%(後遺障害第7級に相当する労働能力喪失率)×③労働能力喪失期間20年に対応するライプニッツ係数12,4622=4187万2992円が後遺障害逸失利益になります(事案の内容や証拠等によって金額が変動することがあります。)。
一方で,令和2年4月1日以降発生の事故で,事故前年度の収入が600万円,症状固定時の年齢が47歳,後遺障害第7級が認定された場合には,ライプニッツ係数を用いると,①600万円×②労働能力喪失率56%(後遺障害第7級に相当する労働能力喪失率)×③労働能力喪失期間20年に対応するライプニッツ係数14.8775=4998万8400円が後遺障害逸失利益になります(事案の内容や証拠等によって金額が変動することがあります。)。
この事案では,ライプニッツ係数の変更により,約800万円もの差が生じることになります。

このように民法改正は交通事故案件についても大きな影響を及ぼします。
法律は複雑で,時代によって変化していく難しさもありますので,交通事故でお悩みの方は一人で抱え込まず,一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

令和2年4月1日以降発生した交通事故の自賠責基準について

東京も緊急事態宣言が解除されましたが,いまだに新型コロナの感染者は増え続けていますので不要不急の外出は控えている最近です。
さて,今回は,令和2年4月1日以降に発生した交通事故の自賠責基準が,従来の自賠責基準と金額が異なるため,傷害による損害(後遺障害による損害と死亡による損害は含みません。)の自賠責基準について,お話いたします。

以下では,「従来」が平成22年4月1日以降令和2年3月31日までに発生した交通事故に適用される自賠責基準をいい,「基準時後」が令和2年4月1日以降に発生した交通事故に適用される自賠責基準をいいます。
入院看護料(近親者) 1日につき 従来4100円→基準時後4200円
通院看護料(近親者) 1日につき 従来2050円→基準時後2100円
休業損害 1日につき 従来5700円→基準時後6100円
慰謝料 1日につき 従来4200円→基準時後4300円

このように,従来の自賠責基準と基準時後の自賠責基準では金額が異なります。

もっとも,以前からブログでお伝えしているとおり,自賠責基準と弁護士基準(裁判基準)では,金額が大きく異なることが多いです。

たとえば,弁護士基準(裁判基準)では,近親者の入院看護料は1日につき6500円,近親者の通院看護料は1日につき3300円,主婦の休業損害は日額約1万円,慰謝料は,骨折などの場合,基本的に,通院期間30日で28万円,通院期間90日で73万円,通院期間180日で116万円,他覚所見のないむちうち症などの場合,基本的に,通院期間30日で19万円,通院期間90日で53万円,通院期間180日で89万円,となります(事案の内容などによって金額が変動する可能性はあります)。

自賠責基準の支払金額は増額したものの,いまだに弁護士基準(裁判基準)との差が大きい事案も多いです。

交通事故で適正な補償を受けられるか不安な方,賠償金の金額でお悩みの方は,一度,交通事故に精通した弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。