交通事故のご相談の中で「相手方が争ってきて、証拠がない場合にはどうなるのですか?」という質問が多くあります。
裁判では証明責任(立証責任)によって判断されることになります。
そこで、今回は、証明責任(立証責任)について、お話ししたいと思います。
証明責任(立証責任)とは、主要事実が真偽不明である場合に、その事実を要件とする自己に有利な法律効果が認められない一方当事者の不利益負担のことです。
基本的には、権利を主張する側が証明責任を負います。
たとえば、金銭の貸し借りの事案であれば、貸した側が貸したことを証明する必要があります。
この場合、証拠との関係では、貸す際には、借用書に一筆もらうなど、証拠を作成する機会があります。
そのため、金銭を貸した事実について、争われ、貸したことについて真偽不明となった場合に、貸した側の請求が認められないことは公平だといえます。
しかしながら、交通事故などの不法行為事案では、事後に証拠が作成されることになるため、どうしても証拠が薄くなる傾向があります。
そのため、しっかりとした証拠が残っていない場合に、真偽不明になることが多くあるため、証拠を残すことがより大切になります。
たとえば、治療経過の証拠として、病院のカルテ(診療録)がありますが、カルテの内容で症状が一貫していることが読み取れない場合には、実際には、症状が一貫している場合であっても、賠償金を減額されてしまうことがあります。
そのため、診察の際の言動には注意が必要で、毎回、医師に症状をしっかりと伝えることが大切です。
また、他覚的所見のない打撲、捻挫などは、骨折事案と比べて、客観的証拠が薄くなる傾向があるため、症状を立証するうえで通院の事実がより重要になりますので、適切な頻度で通院することが大切です。
特に、他覚的所見のない打撲、捻挫の症状の後遺障害等級認定申請においては、後遺障害認定の可否に通院頻度が大きく影響します。
そのため、早い段階で交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。