裁判所から和解案が出される時期について

交通事故の案件を多く対応していると、示談(裁判にならないケース)で解決することが多いですが、裁判になってしまうこともあります。
その際、依頼者の方からの質問で、「いつ裁判は終わるのですか?」という質問がされることがあります。
裁判の終わり方として、主要なものは、和解と判決がありますが、今回は、裁判所から和解案が出される時期についてお話しします。

「裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる」(民事訴訟法89条1項)とされています。
交通事故のお怪我に関する損害賠償請求事件であれば、通常、主張立証が一定程度煮詰まった段階(たとえば、争点に対して一通りの主張がされ、かつ、カルテなどの重要な証拠が提出された段階)で、一度、裁判所からの和解案が出されることが多いです。
この段階で和解が成立しなければ、審理がさらに進み、当事者尋問や証人尋問が予定される場合には、尋問前に、一度、和解案が出されることもあります。
また、尋問後に和解案が出されることもあります。

双方が和解案で和解することを受諾した場合に、その和解案で和解が成立することになるため、一方でも和解を受諾しなければ、和解は成立しません。
そのため、和解案の内容を精査し、和解を受諾せずに、裁判を継続した方が有利であると考えられる場合には、依頼者の方と協議のうえで、和解を受諾しないことが多いです。
一方で、和解を受諾せずに、裁判を継続した方が不利であると考えられる場合には、依頼者の方と協議のうえで、和解を受諾することが多いです。
私の経験上も様々な和解案が出されましたが、その多くは、依頼者にとって有利なものである一方、一部、不利な和解案が出されて受諾しなかったこともあります。
和解案が出されるということは裁判官の心証が一定程度明らかにされたことになるため、不利な和解案を出された場合には、その時点での裁判官の心証を理解したうえで、良い心証になるために、改めて主張や証拠を補充することが多いです。

なお、最後まで和解が成立しない場合には、判決が出されることになります。
いずれにしても、適宜、弁護士が今後の見通しを説明したうえで、依頼者の方としっかり協議することが大切です。